番狂わせ連発、五輪へ危機感
全日本選抜体重別を終えて
9月に大阪である世界柔道の代表選考会、全日本選抜体重別が6日、終わった。一番の収穫は100キロ級の鈴木桂治(平成管財)が五輪、 世界王者の井上康生(綜合警備保障)を倒したことだ。井上はいったんは相手への指導でポイントを先取した。だが、「ここで白黒つける」という気持ちが、半ば勝った気になったのだろう。 集中力が抜けたようだった。
一方の鈴木は堂々とした試合内容。成長を強く印象付けた。世界への代表切符は逃したが、「王者」対「挑戦者」だった2人の立場は、 並んだと見ていい。2人がしのぎ合うことは、日本柔道界に大きなプラスだ。
81キロ級の秋山成勲(平成管財)は、決勝で中村兼三(旭化成)に 決めた鮮やかな投げに、強烈な印象を受けた。60キロ級は野村忠宏(ミキハウス)が復活した。1回戦から顔つきが違って、「彼なら」という期待感が、代表選考につながった。
ただ、今大会を見る限りは「世界の1番手」は井上しかいない。決勝で敗れた結果、強化委員会では議論もあったが、世界選手権で金メダルが取れるのはやはり井上という結論になった。100キロ超級の棟田康幸(警視庁)にも期待したが、痛めた右ひざが心配だ。
これほどの番狂わせの多さは記憶にない。厳しく言えば、ここで重圧を感じていては大舞台での実力発揮は難しい。世界選手権、アテネ五輪に向け、危機感がつのった。
(全柔連男子強化部長、東海大教授、朝日新聞社嘱託)
2003年04月08日付、朝日新聞朝刊
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