講演録 / 新聞・雑誌クリッピング

2004年06月14日
愛媛県武道館だより創刊に寄せて

 愛媛に素晴らしい武道館が完成し、平成15年10月1日にオープンしました。
 私は、武道やスポーツを通じて明るく活力ある社会づくりを進める愛媛県の取り組みに賛同して、名誉館長をお引き受けしました。
 今回は、愛媛県武道館だよりの記念すべき創刊号ということで、日頃私が考えていること(スポーツの奨励、精神面の大切さ)について、お話しさせていただ きます。
 まず最初に、“スポーツの奨励”についてですが、変動する社会の中では、生きていくためのたくましい精神と健全な肉体が求められますから、スポーツとい うよりも生きるための基本的な体力を培う運動が当然必要だと思います。こうした時代に運動嫌いの子どもたちが増えているのは皮肉なことだと思います。そう いう子どもたちは、抵抗なく参加できる、遊びにより近い運動からはじめると良いと思います。
 最近は、兄弟が少なく、遊び場も少ないため、子どもたちが自分の部屋にこもりがちで、対人関係も希薄になっています。かつては、特にスポーツをやらなく ても、近所の子どもたちが集まり、遊び回る場があって、それが適度な運動になっていました。その中で子どもたちは人との関わり方を覚えていったものです。 これは、人間が社会的に生活していく上で非常に大切なことです。スポーツはただ単に汗を流すだけでなく、仲間との関わり合いの中で、助け合い、思いやり、 時には我慢が必要なことなど、人間として生きる基本的な術(すべ)を学ぶことができます。今は子どもたちが遊びの中でそういうことを経験する機会が少ない からこそ、スポーツをもっと奨励していかなければならないと思っています。
 次に、“精神面の大切さ”についてですが、柔道やスポーツに限らず、精神面が重要でないものはないでしょう。精神的なたくましさ、強さ、集中力、そして 燃え上がる情熱。なにをするにも、こういったものが成功するためには必要なのではないでしょうか。
 偶然の幸運を伴った、単発的な成功であれば自己を高ずとも手に入るかもしれません。しかし、本当の意味での成功のためには、志を高く持ち、高い理想、目 的に向かって“頑張る心”がなければなりません。
 人生には成功も失敗もあります。瞬間で見れば、成功したかのように見えたことが、実は失敗であったり、またその逆もあります。物事には必ず二つの面があ りますから、成功に結びつけるのか、失敗に結びつけるのかは、その人の受け止め方次第です。人生を成功に結びつけるためには、あくまでも謙虚に、自分はま だまだ未熟なんだという気持ちを忘れずに、現状に満足することなく、昨日より今日、今日より明日、と少しずつでも人間的に成長していく気持ちを持ち続ける ことが大切だと思います。
 最後に、次代を担う青少年が.スポーツを通じて心やさしく、たくましく育つことを願うとともに、全国に愛媛の元気を伝える架け橋となれますよう、微力な がら尽くしたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いします。
一覧ページに戻る