今回の総会で柔道が除外されることはないと確信していました。しかし、残った26の競技も、「スポーツを通したスポーツマンシップと世界平和」という、いま五輪が目指しているものを理解した上で活動し続けないと、いつどこで落とされるかわかりません。 アテネ五輪の際に、64の観点から全競技が評価されました。大会運営、観客数、審判の透明性、施設の後利用、テレビ放送時間等、すべてが評価対象です。 柔道も総会を前に、全IOC委員に柔道をアピールするパンフレットを作りました。でも、「あまり早く配っては、危機感を抱いていると思われてしまう」と判断し、配布のタイミングにも配慮しました。 また、直前まで展開するロビー活動をだれが行うかも、検討を重ねました。「柔道のシンボルである山下が行くべきだ」という声もいただきましたが、私は英語 しか話せません。多くの言語で各委員にアピールできるよう、フランス人のベソン・スポーツ理事と、スペイン人のバルコス審判理事が乗り込みました。 創始国には競技を普及させる責任もある。日本から毎年50~60人の柔道指導者が海外に出ています。また、過去15年間で、日本から3万着以上のリサイク ル柔道着を世界132カ国に贈りました。現在も、全日本柔道連盟と国際交流基金が共同で、柔道を各国の正課授業に取り入れてもらうためのDVDを制作中で す。 普及の過程では、伝統的な「柔道」から「JUDO」への変化が確かにあります。近年では、カラー柔道着や、試合の延長方法が導入されました。 それでも、「これを変えたら柔道ではなくなってしまう」という点は体を張って守ります。「一本を大事にする」「相手がいて自分が磨けるという礼の心」「日本語」の3点です。 そして昨年2月、IOCのロゲ会長に、「柔道では、たとえ審判が誤っても、相手への敬意や尊敬を忘れませんね。他競技にはない素晴らしさです」といわれるまでになったのです。(談)。 | ||
構成 本誌・抜井規泰 |