講演録 / 新聞・雑誌クリッピング

2005年08月04日
『日本骨髄バンクニュース vol.26』
やさしさと思いやりのあらわれ
夫婦一緒にドナー登録
「55歳」にも揃って延長へ

今骨髄バンクの骨髄提供年齢が、9月から55歳に引き上げられます。それを知ったとき、山下さんが思い浮かべたのは、映画化もされたミステリー小説『半落ち』だったそうです。
 「本を読んでからDVDを見ましたが、『ああ、55歳に延びるのか』と思った瞬間、主人公を演じた寺尾聰さんの表情がよみがえりました。主人公が登録取り消し年齢を非常に気にしていたからなんですね」
その山下さんの「ドナー登録歴」は長いのです。日本骨髄バンクが本格稼働した翌年の平成5年に、みどり夫人と揃っての登録でしたから、もう12年もたちま す。厚生省(当時)と財団が作成したポスターに登場し、「技あり!大きな愛」のキャッチコピーでバンクへのドナー登録を呼びかけました。
登録のきっかけは、みどり夫人の「簡単なことで誰かが助かるんだから」という一言ですが、後押しする経験がその10年近く前にありました。血縁者間の骨髄移植のため東海大学病院に入院していた小学生の母親から、血小板の確保を懇願されたのです。
「全く面識のない方でしたが、困り果てている雰囲気が受話器を通して伝わってきましたので、多忙を極めていたんですが、協力をお約束しました。その子からは、今も自宅に手紙をちょうだいしています」
それだけではありません。教え子が移植後の病室を頻繁に訪れて、その子を励ましつづけていたことを、退院後に初めで知らされたのでした。
「柔道郡の練習を真面目にしないので、とんでもない部員だとばかり思っていた彼が、一番のやさしさを持っていたんですから、学生の見方が変わりました。一 面的にでなく多面的に見なければいけませんし、誰にもいいところはある、ということを悟らされたんです。学生に対する指導方法が、ずいぶん変化しました」
登録年齢の引き上げに伴って、夫妻ともドナー登録を継続する気持ちを固めています。
「大事なことは、人はお互いに思い合い支え合って生きていく気持ちではないかと思います。やさしさと思いやりにあふれた世の中になってほしいですし、その あらわれの1つが骨髄バンクだと思っています。だから、こういう活動にはもっと多くの方々に関心を持ってもらいたいですね」

山下泰裕氏
やました・やすひろ 昭和32年6月1日、熊本県生まれ。小学校4年生から柔道を始め、19歳で全日本選手権史上最年少優勝し9連覇を果たす。ロサンゼルス五輪金メダル獲得、国民栄誉賞受賞。国際柔道連盟理事、東海大学体育学部教授
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