講演録 / 新聞・雑誌クリッピング

2005年12月27日
讀賣新聞「ロシア学校占拠事件 母犠牲の中学生」 
勇気あげたい
山下泰裕さん奔走
福岡の柔道大会招待
昨 年9月のロシア北オセチヤ共和国学校占拠事件で、母親を亡くした中学生チェルメン・ナガーエフ君(14)が、国際柔道連盟理事で東海大学教授の山下泰裕さ んらの尽力で、福岡県宗像市で12月27日に開かれる「第3回サニックス旗国際中学生柔道大会」に招かれ、出場することになった。ナガーエフ君は、年齢 オーバーで本来なら参加資格がないが、山下さんが橋渡し役となり、「悲惨な経験をした子供たちを少しでも励ましたい」と説明、主催者の九州柔道協会も特例 として認めた。

惨事の後、山下さんが子供たちに何かできないかと考えていたところ、ロシアの友人から「事件があったベスランでは格闘技が盛ん」という話を聞き、柔道を通した日本の子供との交流を思いついた。

山下さんは同大会が中学生の国際大会で、昨年はロシア・サンクトペテルブルクからの招待実績もあることから、大会事務局や外務省に働きかけた。ロシア側は サンクトペテルブルクのチームのほか、ベスランの中学生7人を人選。この中の一人が、事件で人質となった母を失ったナガーエフ君だった。

ところが、大会の出場規定は1991年4月2日生まれで、同年3月3日生まれのナガーエフ君には資格がなかった。このため、九州柔道協会は今月上旬に協議。世界的に衝撃となった事件であり、ナガーエフ君にとって大きな励ましになるとして認めた。

20日夜、山下さんが来日したプーチン大統領と懇談した際、大統領側から今回の招待の話が持ち出され、尽力に対し、謝意が示されたという。

大会は宗像市のグローバルアリーナで開催。国内59チームと、アメリカ、ドイツ、韓国、香港からの選手も含め、約500人が参加する。大会当日前後には、練成会が開かれ、2泊3日の期間中、練習などを通じてふれ合ってもらう。

山 下さんは「少しでも勇気付けてあげられればと思った。多くの方々の協力で実現できてうれしい」と喜んでいる。招待費用を持ち、大会事務局を務めるグローバ ルアリーナの近藤勇社長は「世界で様々なことが起きていることを知り、日本の子供たちにとっても良い機会になると思う」と話している。

※学校占拠事件
昨年9月1日、ロシア南部・北オセチヤ共和国ベスランの第1中学校をチェチェンの武装集団が襲撃、始業式に参加していた児童、父母ら1100人以上を体育 館に監禁、人質にとった。発生から52時間後、ロシア治安部隊が突入、銃撃戦となり、武装集団が仕掛けた爆弾も爆発、人質300人以上が死亡した。
一覧ページに戻る