明けましておめでとうございます。
2013年12月4日に衆議院第185回 文部科学委員会で発言させていただいた議事録を皆様にシェアさせていただきます。
何かご質問などがありましたら、ご連絡ください。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
========== 以下、 議事録より抜粋 =============
○小渕委員長
この際、御紹介いたします。
ただいま参考人の公益財団法人全日本柔道連盟副会長、東海大学理事・副学長、公益財団法人日本オリンピック委員会理事山下泰裕君が御出席をされました。
山下参考人におかれましては、大変御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうぞ、本日、よろしくお願いいたします。(拍手)
次に、坂本祐之輔君。
○坂本(祐)委員
日本維新の会の坂本祐之輔です。よろしくお願いします。
参考人の先生方には、大変に御多用の中にもかかわりませず御出席をいただきましたことに、厚く御礼を申し上げます。
さて、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックの東京開催が決定をいたしました。御尽力をいただきました下村文部科学大臣を初め多くの関係の皆様方に深く敬意を表しますとともに、心から感謝を申し上げます。スポーツに携わる私も、大変にうれしく存じているところでございます。開催で、我が国のスポーツを取り巻く環境も大きく発展をするものと確信をいたしております。
中央競技団体、そして大学、高校、中学校の部活動、さらには小学校の子供たちが愛好するスポーツクラブでの活動、オリンピック選手の背中を見て、みずから、自分の競技で自分も一生懸命に頑張ろう、そう思うと思います。
そして、個人では、高齢者の方々も、七年後に開催をされるオリンピック競技、健康で元気でそのときを迎えたい、競技場で応援をしたい、あるいはテレビで観戦をしたい、それが自分の夢だ、そうおっしゃる方々も多くいらっしゃいます。
そして、青少年たちは、苦難を乗り越えてオリンピックに出場され、すばらしい成績を残したアスリートを見て、みずからの夢に重ねて、自分の人生に、自分の生きざまに力強い魂を感じるのではないか、勇気や感動を覚えるものと思います。
そこで、お伺いをいたします。
オリンピック・パラリンピックを契機に、学校教育、道徳教育の中にフェアプレー精神を取り上げるべきだと私は考えています。フェアプレー精神、すなわち友情、尊敬、感謝、自信、信頼、思いやり、誇り、まさに人生を力強く生き抜く力だと思います。山下参考人には、青少年に対してどのように伝えていったらいいのか、御示唆をいただきたいと存じます。
○山下参考人
この委員会に参考人としてお招きいただいたこと、まず心からお礼を申し上げたいと思います。
フェアプレーの精神、ルールを遵守し、相手に敬意を払い、思いやる態度、まさに今の日本社会にとって必要な精神ではないかと思います。
では、道徳教育の中でどうやって伝えていくのかという御質問でございますけれども、やはり、スポーツの事例を通して伝えていくのが最もわかりやすいと考えます。私も海外で話す機会が多いんですけれども、よく二つの事例を出します。
一つは、一九六四年の東京オリンピック大会、柔道無差別級。神永選手がへーシンク選手に敗れましたけれども、あの後、へーシンク選手がとった態度、御存じの方もおられると思います。喜んで上がってこようとしたオランダの仲間を制しました。そして、きちんと礼を尽くした。
もう一つの例は、一九八四年のロサンゼルス・オリンピック、柔道無差別級。これは私が出場した大会でございます。私とラシュワン選手の戦い。私は右足をけがしまして引きずっておったんですけれども、彼は正々堂々と戦いました。大会が終わった後、世界のマスコミから、何で山下のけがした足を攻めなかったんだと言われたんですけれども、彼は、私はアラブ人だ、私にはアラブ人としての誇りがある、そんなひきょうなことはできない、そういう話をしたそうでございます。
こういう話をしますと、外国の柔道関係者も、相手を敬う心、このことをどうもよく理解できるような気がします。
柔道に限ったことではありません。さまざまなスポーツでそういったフェアプレーの事例があると思います。
私自身も一九九二年から八年間、全日本柔道の男子監督を務めましたけれども、目指したのは最強の選手づくりではありませんでした。我々日本柔道が目指してきたのは、最高の選手づくりでした。私は、道徳教育の中で、そのようなスポーツのさまざまな事例を用いて伝えていくのが最もわかりやすいと思います。
そしてもう一つ。大切なことは、単にそのフェアプレーの精神を学ぶだけではない、これをスポーツの場だけじゃない、コート、グラウンド、道場だけじゃない、日常生活の中で、ふだんの生活の中で生かしていくこと、これが非常に大事ではなかろうかと思います。これが浸透していけば、私は、それを通してフェアな社会、思いやりあふれる社会の実現が可能であると思います。
ぜひ道徳教育の中で、フェアプレーの精神の導入を前向きに御検討いただきたいと思っております。
○坂本(祐)委員
ありがとうございました。すばらしい御答弁をいただきました。
今の御答弁をお聞きいたしまして、道徳教育に力を注いでいらっしゃる下村文部科学大臣の御見解をお伺いいたしたいと存じます。
○下村国務大臣
今、山下参考人からもお話がありましたが、スポーツにおけるフェアプレー精神、これは、決まりやルールを守ること、正義を重んじ、公正公平な意識や態度を持つこと、友情や信頼のとうとさなど、道徳教育に不可欠な内容を児童生徒にわかりやすく指導する上で極めて有意義なものと考えます。
このため、今、心のノートの全面改訂をし、来年四月から全面改訂版、心のノートという名前も変えていきたいと思っておりますが、この中で、オリンピックやスポーツを通じたフェアプレー精神の重要性に関する内容を充実させたいと思っております。
具体的に、近代オリンピックの祖でありますクーベルタンやあるいは嘉納治五郎、こういう方々のエピソードを入れることを考えておりまして、こういうことを通じて、さらなる道徳教育の充実を図ってまいりたいと思います。
○坂本(祐)委員
ありがとうございました。
ぜひ道徳教育の中でフェアプレー精神を取り上げていただきたいと願っております。
オリンピアン、パラリンピアンが日本の中にはたくさんおいででいらっしゃいます。みずからの夢を実現されたアスリート、オーラがあり、高いわざを持ち、そして深い人生観をお持ちでいらっしゃいます。それらの方々が全国全ての小中学校で子供たちとの触れ合いを行っていただく、そのことによって、子供たちに夢を与え、オリンピックの機運を高めることができると考えております。
山下参考人には、オリンピアンとして、今の私の提言に対する御見解をお聞かせください。
○山下参考人
今の御提案でございますけれども、全国全ての小中学校の子供たちにオリンピアン、パラリンピアンと触れ合う機会を設けてはどうかというお話でございます。私、個人的に、大変意義ある大切なことであると思いますし、大賛成でございます。
この場にお集まりの先生方ももう既に感じておられると思いますけれども、大変残念ながら、今の子供たちは、夢を持てない、希望を持てない子供たちが多いです。これは、子供たちだけの責任ではございません。我々大人の責任であると私は考えております。
そして、子供たちに夢や感動を与えるような場面を我々大人は十分提供できていません。日本オリンピック委員会、JOCでも、全国でオリンピック教室を開催しております。そして、ここにオリンピアンを派遣し、昨年度が十三校で実施、今年度が十五校で実施しております。また、東日本復興支援のJOC「がんばれ!ニッポン!」プロジェクト、これも三カ年で六十カ所で行っております。日本スポーツ振興センター、河野理事長のところでも同様の取り組みを行っておられます。しかし、どちらもまだまだ十分ではございません。
二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの成功へ向けまして、文科省とJOC、あるいは日本スポーツ振興センター、日体協、日本オリンピアンズ協会、さまざまなところが協力して、願わくば全ての、できなくても、一つでも多くの小中学校にオリンピアンあるいはパラリンピアンを派遣する、こういうことを通して少しでも子供たちに夢や希望を持ってもらう、感動を与えることは大賛成でございまして、ぜひ実現する方向で御検討いただければありがたいと思っております。
○坂本(祐)委員
ありがとうございました。
それでは、今の山下参考人の御見解を踏まえてのお考えを下村大臣にお伺いいたします。
○下村国務大臣
今回の大会開催に当たっては、オリンピックやパラリンピックに関する理解の促進、スポーツへの興味、関心の喚起など、子供たちの生涯にわたる豊かなスポーツライフを実現する資質や能力の育成につながることが重要であるというふうに考えております。
このため、オリンピアンやパラリンピアンと子供たちとの交流、また教材の作成等によりまして、オリンピックやパラリンピックの価値、精神を子供たちに体得させるような取り組みを進めてまいりたいと考えております。
さらに、今回の大会は、大会の成功はもとより、単なる一過性の行事にとどめることなく、また、東京だけでなく日本社会全体を元気にしてさらなる発展を目指すための大きなチャンスとして捉えたいと考えます。
このため、今後全国に、子供たちが継続的にスポーツに親しむ機会を確保する中で、オリンピアンやパラリンピアンと触れ合う機会をふやしていく工夫について検討してまいりたいと思います。
○坂本(祐)委員
前向きな御見解をいただきまして、ありがとうございました。
さて、私は以前、予算委員会で体罰、暴力の質問をいたしましたが、いまだに後を絶たないのが実情であります。オリンピック・パラリンピックを契機として、子供たちの大きな夢を豊かに育てていかなければなりません。だからこそ、ここに改めて、体罰、暴力を根絶する必要があると思います。
山下参考人には、先ほど、世界最強の選手を育てるのではない、世界最高の選手を育てるのだとおっしゃっておられました。これまでの御経験から、体罰、暴力を根絶するためにどのような取り組みをするべきかについてお答えをいただきたいと存じます。
○山下参考人
まず、今の御質問にお答えする前に、日本の柔道界におきまして、指導者の選手たちに対する暴力等で世間をお騒がせしました。多くの方々に大変な御迷惑をおかけしました。この場をおかりしまして、柔道関係者の一人として心からおわび申し上げます。そして、まずは柔道界において、暴力の根絶に向けて全力を傾けてまいることをこの場でお誓いさせていただきたい、こう思っております。
なぜこのような暴力や体罰が起こるのか。幾つか理由が考えられます。その一つは、指導者が未熟なためにうまく言葉で指導できない、それからもう一つは、指導者自身あるいは暴力行為を行う者自身が自分の感情をうまくコントロールできない、それからもう一つ、暴力や体罰といったもので威圧しながら指導することを通して即効的な成果を求める、こういうケースが考えられると思います。
まずは指導者自身が、体罰や暴力行為、これは自分自身の指導力が未熟であるといった認識を持つことが大事だろうと思います。そして、それらは決して許される行為でないということを指導者あるいは教育者たちに認識させる、こういった指導者教育が必要であると思います。
そのようなスポーツの指導者あるいは教育者を育成している大学にも重い責任があると思います。私も東海大学で副学長を務めております。大学の責任も、我々はもっともっと自覚していく必要があろうと思います。
それからもう一つ。保護者を含めた子供たちを取り巻く環境の中に、目先の勝利を優先した、これは決して先々選手が伸びることにつながっていかないんですけれども、誤った勝利至上主義が見受けられる、これも問題だろうと思います。
全日本柔道連盟では、この四月から暴力根絶プロジェクトを立ち上げました。また、JOC、日本オリンピック委員会では、竹田会長みずからのリーダーシップのもとに、この九月からアントラージュ部会、これはなかなか聞きなれない言葉ですけれども、簡単に言いますと、選手を取り巻く環境を整える、よりよい環境を選手に提供する、竹田会長が二〇二〇年に向けてつくられた部会でありますけれども、これが立ち上がりました。ここで、最優先課題としまして、スポーツ界における暴力の根絶に向けた活動を掲げております。
指導者あるいは教育者の意識改革のために、文科省、日体協、JOC、日本スポーツ振興センター、あるいは各競技団体、中体連、高体連等が連携をとりながら行動することが必要である、こういうふうに考えます。
実は、柔道界のプロジェクトもJOCのアントラージュ部会も、どちらも私が責任者でございます。全力を挙げて指導者の意識改革に取り組み、子供たちあるいは少年少女が安心して笑顔でスポーツを楽しめる、そんな環境づくりに取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。
○坂本(祐)委員
力強い御意見をいただき、まことにありがとうございます。
ただいまの御意見を踏まえて、大臣から御所見をお伺いいたしたいと存じます。
○下村国務大臣
今、山下参考人がおっしゃったとおりだというふうに思います。
指導において体罰、暴力を行っているのは自分が未熟だからだと指導者の方々が十分に自覚することによって、ことしが我が国において、スポーツにおける、運動における体罰、暴力根絶の元年であるというふうな自覚を持って、ぜひ進めていただきたいというふうに思います。
文部科学省でも、二月の五日にはスポーツ指導における暴力根絶へ向けての大臣メッセージの発出、また、三月には体罰禁止の徹底に係る通知の発出、さらに、五月には運動部活動での指導のガイドラインの作成、また、七月には「スポーツ指導者の資質能力向上のための有識者会議(タスクフォース)報告書」の作成、さらに、八月には体罰に係る実態調査結果の公表等を行ってまいりました。
今後も、運動部活動やスポーツ活動の指導者が適切な指導方法等を学ぶことができる場を確保して、スポーツ指導において体罰や暴力が根絶されるよう取り組んでまいります。
○坂本(祐)委員
ありがとうございました。
今までの御質問、また御答弁を踏まえて考えますと、学校教育の中で、体育、部活、道徳教育、これらはまさに、スポーツ、体育と教育は一体化しているものと私は考えております。
ここで、スポーツ庁設置に向けた動きが加速する中で、私は文部科学省の外局としてスポーツ庁を設置すべきだと考えておりますが、大臣の所見をお伺いいたします。
○下村国務大臣
スポーツ庁のあり方を検討するに当たっては、議員御指摘のとおり、どの省庁に設置するのか、また、学校教育活動である学校体育や部活動をスポーツ庁の所掌に取り込むか否かといったことを初めとして、整理すべきさまざまな課題があります。
これらの課題については、現在、超党派のスポーツ議員連盟のプロジェクトチームにおいて精力的に検討が進められているというふうに承知をしておりますし、また一方、文部科学省におきましても、櫻田副大臣のもとにタスクフォースを設置して、現在検討しているところでございます。
今後、スポーツ議員連盟における議論とともに連携しながら、スポーツ施策の付加価値を最大限高められるよう、これは健康福祉的な部分からもスポーツをどう活用するかという部分も入ってまいりますので、政府全体として、スポーツ庁のあり方について幅広く検討しながら、あるべき形について決めてまいりたいと思います。
○坂本(祐)委員
ありがとうございました。
最後になりますけれども、きょうは時間の関係で河野参考人には御質問ができませんでした、申しわけありません。ただ、河野参考人、そして大臣、山下参考人にも改めてお願いをすること、それは、オリンピックでメダルをかち取っていく、オリンピックムーブメントを高めていく、そうであるならば、国体であり、インターハイであり、そして全中であり、小学校の全国のスポーツ大会であり、しっかりとした競技力の向上を目指していくべき、そして、中学校の学校体育あるいは部活動という普及振興も図っていく必要があろうかと思います。富士山のように頂を高く求めるのであれば、普及振興の裾野は大きく広がっていかなければならないと考えるからです。
ぜひ、大臣を初め、参考人の皆様方には、これらを踏まえて、スポーツ振興にお力添えを賜りますようにさらなる取り組みをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○小渕委員長
山下参考人におかれましては、大変貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼申し上げさせていただきたいと思います。(拍手)