3人の世界チャンピオン、100キロ級三連覇の井上康生、無差別級の鈴木桂治、100キロ超の棟田康之が柔道日本一を賭けて戦う全日本柔道選手権大会。そして、この大会でアテネオリンピックの100キロ級と100キロ超級の代表選手の最終選考が行われる。オリンピックには無差別級がないから、世界チャンピオンが3人いても、揃ってオリンピックに出場することはできない。そういう意味でもこれまでにない注目を集め、オリンピックへ向けてのもの凄い熱気が感じられる大会でした。

鈴木桂治が強豪を退けて優勝。オリンピック代表選考会では、優勝した鈴木桂治が100キロ超級、100キロ級には井上康生が選ばれました。



鈴木よ、よく頑張った

準決勝で棟田康幸を、そして、決勝で井上康生を倒して初優勝を遂げた鈴木桂治が、やはり一番素晴らしかった。最初の相手の生田秀幸は、4月4日の体重別100キロ超級に優勝した、とてもよい選手で、このところ自信を付けてきていました。コーチングスタッフたちとも、最初から息を呑む思いで見守りました。その最初の試合で十字固めの一本を取ってからは、ふっきれたように尻上がりで気迫がみなぎってきました。体重別では決勝を意識しすぎたようでしたが、今回は目の前のひとつひとつに力を出し切ることに集中できていました。5試合全てが素晴らしかった。技も身体も人間的にも成長したようです。この日の鈴木の試合は、柔道人の胸を打ちました。ひたむきに、あきらめずにずっと頑張ってきたことが花を咲かせたのだと思います。おめでとう！

重量級のチャンピオン、棟田康幸はオリンピック代表を逃してしまいました。しかし、まだまだ若い。この困難をこの逆境を乗り越えて、ひとまわりもふたまわりも大きくなった棟田の雄姿を来年の全日本に見せて欲しい。

今回の全日本では、井上、鈴木、棟田の実力は拮抗していて、ほぼ互角の力を持っていると言うことがはっきりと見て取れました。しばらくは、この三強の司代が続くでしょう。お互いに競い合いながら、それぞれのレベルをもっと高くしていって欲しい。そして、日本柔道の一時代を築いていって欲しいなと思います。