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責任の重さを感じ、自分を変えてきた
■尾木:現役引退後、指導者として活動されるなかで、ご自身が変わったなと感じていらっしゃることは何でしょうか。
■山下:ぼくはもともと競争が好きで、現役時代は他人をけ落としてでも一番になってやるという思いを持っていました。ただし、それと同時に萱の外では、柔道をとおしてやさしさや思いやり、感謝の気持ちなどを持たなければならないと考えていたんです。
■尾木:競争心とやさしさを使い分けていたわけですね。
■山下:ただ、現役時代はがむしゃらでよかったんですが、その後学生を指導する立場になったときに、実社会を知らない自分ははたして指導ができるだろうかと考えました。まず自分が社会のことを学ばなければ、生き方や、人生への姿勢といった人間としての最も基本的なところを教えられないだろうと思ったんです。それに、金メダルをとったことで、柔道の技量
だけでなく人間性までも過大評価されて、場違いなところにも引っ張り出されてしまう。教育課程審議会の委員になったときも最初に言ったんですよ。文部省は私みたいな人間をこういう場に選んで、いい加減だなと思っていますと(笑)。でもそこで自分個人がたいしたことないと思われるのはいいけど、自分をとおして見ることで、柔道やほかのスポーツ選手たちをもたいしたことないと思われるのはいやなんです。だから役職に就いたときは、抜擢されて喜ぶ人間ではなくて、その責任の重さを感じる人間になりたいと思っているんです。教課審のときもいろいろな人の意見を聞いたり、自分で勉強して教育について学びました。そうした責任感みたいなものが自分を変えていく力になっているような気がします。
うことなんですね。
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